奨学金は借りるべき?借りない方がいい?大学生活を壊さないための判断基準
目次
- 奨学金は「借金だから借りない」だけでは決められない
- 奨学金を借りない場合にもコストはある
- まず貸与型より先に「返さなくていい支援」を確認する
- 一人暮らしの生活費は「家賃+食費+光熱費」では終わらない
- 現在の一人暮らしなら月十数万円かかるケースも考えておく
- 食費はお金だけでなく「時間」まで考える
- 奨学金の必要額はこの順番で計算する
- 「毎月ちょうど0円」になる設計はおすすめしない
- 第一種と第二種では同じように考えない
- 借りる前に、卒業後の返済額の目安を必ず確認する
- 思ったより必要なければ途中で金額を見直せる
- こんな人は奨学金を無理に借りなくていい
- 逆に「借りないこと」にこだわりすぎない方がいい人
- 返済が不安なら「借りる前」に返済額を見る
- 結論|奨学金を借りないことではなく、大学生活を成立させることから考える
- FAQ
- 著者情報
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奨学金は、必要なら使ってよいと私は考えています。
ただし、「奨学金は低金利だから借りればいい」という意味でも、「みんな借りているから大丈夫」という意味でもありません。
奨学金を借りないことで何を失うのかと、借りることで卒業後に何を負担するのか。この両方を比べて決めるべきです。
特に大学進学後に一人暮らしをするなら、学費だけではなく、家賃・食費・教材費・交通費・日用品などを実際に出してから判断してください。
奨学金は「借金だから借りない」だけでは決められない
貸与型奨学金は、もちろん返さなければならないお金です。
第一種は無利子、第二種は有利子ですが、どちらも基本的には学生本人が卒業後に返還していきます。(JASSO)
だから、借りなくて済むのに意味もなく借りる必要はありません。
「大学生の半分が奨学金という借金を抱えている」と言われることがありますが、これは正確ではありません。JASSOの令和6年度学生生活調査では、大学学部(昼間部)の51.1%が何らかの奨学金(JASSO以外の給付・貸与や大学独自の奨学金も含む)を受給していますが、JASSOの給付・貸与奨学金に限った令和6年度の実績は31.7%です。返済不要の給付型も含まれているため、「借金をしている学生が5割」という理解は誤りです。(JASSO 学生生活調査)
一方で私は、
「借金をゼロにすること」自体が大学生活の目的になってしまうのも違う
と考えています。
そもそも何のために大学へ行くのでしょうか。
学部によって職業との結びつきは大きく違いますし、就職も大学へ行く重要な目的の一つでしょう。
それでも、大学へ通いながら学問を学ぶ時間をほとんど取れず、
大学へ行く→生活費が足りない→奨学金は借金だから絶対に使わない→夜まで何日もアルバイトする→授業に出るだけで精いっぱい→予習・復習・読書・研究に使える時間がない
となるなら、一度考え直した方がいいと思います。
全国大学生協連の第61回学生生活実態調査(2025年)では、1週間のアルバイト時間が0〜7時間の学生は「授業外の予習・復習が0時間」の割合が7.4%だったのに対し、23時間以上働く学生では21.9%まで上昇しています。因果関係を断定するものではありませんが、アルバイト時間が長い学生ほど授業外学習の時間を確保できていない傾向が確認できます。(全国大学生協連 第61回学生生活実態調査)
アルバイトをするな、という話ではありません。
社会経験にもなりますし、自分の娯楽費を稼ぐこともできます。
問題なのは、奨学金を避けるために大学で使うはずだった時間まで売らなければ生活できない状態です。
奨学金を借りない場合にもコストはある
奨学金を借りた場合のコストは分かりやすいです。
返済です。
では、借りなかった場合は無料なのでしょうか。
そうとは限りません。
例えば毎月3万円不足していて、
- 奨学金を月3万円借りる
- その3万円を稼ぐためにアルバイトを増やす
という2択になっているなら、比べるべきなのは「借金あり・なし」だけではありません。
アルバイトを増やしたことで、
- 予習・復習ができない
- 大学の図書館を使う時間がない
- 資格勉強ができない
- ゼミや研究へ十分取り組めない
- 睡眠時間が減る
- 体調を崩しやすくなる
のであれば、そこにもコストがあります。
借金を避けることによって失うものまで含めて比較する。
これが私の考える奨学金の判断方法です。
まず貸与型より先に「返さなくていい支援」を確認する
ただし、いきなり第一種・第二種を選ぶ必要はありません。
最初に確認したいのは、
- 給付型奨学金
- 授業料・入学金の減免
- 大学独自の奨学金
- 自治体や民間団体の給付制度
です。
JASSOの高等教育の修学支援新制度では、条件を満たす学生に返還不要の給付奨学金と授業料・入学金の減免があります。(JASSO)
返さなくてよい支援を利用できるのに、先に貸与型を増やす必要はありません。
そのうえで足りない金額について第一種・第二種を考えます。
一人暮らしの生活費は「家賃+食費+光熱費」では終わらない
奨学金をいくら借りるか考えるときに、かなり危険なのが生活費の過小評価です。
一人暮らしを始める前は、
「家賃6万円、食費2万円、光熱費1万円だから9万円くらい」
と考えてしまうかもしれません。
しかし実際には、
- スマホ・インターネット
- トイレットペーパーやシャンプーなどの日用品
- 通学定期
- 教科書
- パソコン
- 衣類
- 医療費
- 交際費
- 帰省費
- 突発的な出費
もあります。
私は実際に、春学期だけで大学の教材に約2万円かかった経験があります。
教材費は毎月同じ額ではありません。4月や後期開始時などにまとめて必要になるため、「今月は余ったから使う」ではなく、月々積み立てておいた方が管理しやすい支出です。
全国大学生協連の2025年度保護者に聞く新入生調査では、受験から入学までの費用面で予定と違って困ったこととして「教科書や教材、パソコンの費用が高かった」と回答した保護者が46.3%にのぼりました。入学前の見積もりでは見落とされやすい支出であることがうかがえます。(全国大学生協連 新入生調査)
現在の一人暮らしなら月十数万円かかるケースも考えておく
以下は統計上の平均ではありません。
現在の物価で、毎月完全にゼロにならない大学生活を想定したモデルケースです。
| 項目 | 月額モデル |
|---|---|
| 家賃 | 60,000円 |
| 食費 | 35,000円 |
| 電気・ガス・水道 | 10,000円 |
| スマホ・ネット | 6,000円 |
| 日用品 | 5,000円 |
| 通学・交通費 | 7,000円 |
| 教科書・教材積立 | 4,000円 |
| 娯楽・交際費 | 15,000円 |
| 衣類・医療・その他 | 8,000円 |
| 貯金・緊急予備費 | 10,000円 |
| 合計 | 160,000円 |
全国大学生協連の第61回学生生活実態調査(2025年)では、下宿生の1か月あたりの住居費平均は55,452円、食費平均は29,853円でした。食費は前年から3,743円増えています。地域や物件によって差はありますが、一人暮らし生活費を見積もる際の参考値として使えます。(全国大学生協連 第61回学生生活実態調査)
首都圏なら家賃はさらに上がります。全国大学生協連の2025年度新入生調査では、東京・埼玉・千葉・神奈川の新入生の1か月家賃平均は69,900円でした。上のモデルより家賃部分が高くなる地域もあります。(全国大学生協連 新入生調査)
もちろん、
「全員十数万円必要です」
という話ではありません。
寮なら家賃は下がりますし、大学まで徒歩なら交通費もほぼなくなります。
逆に学費まで本人が負担するなら、この表とは別に学費も必要です。
重要なのは、昔の「大学生なら食費1万円で何とかなる」といったモデルをそのまま前提にしないことです。2026年7月の全国消費者物価指数は前年同月比1.9%上昇しており、数年前の生活費モデルをそのまま現在に当てはめるのも危険です。(総務省統計局)
食費はお金だけでなく「時間」まで考える
節約の記事では、
「毎日3食自炊すれば安くできる」
と言われることがあります。
確かに金額だけなら下げられるでしょう。
ただし、
大学へ行く→授業を受ける→課題をする→アルバイトをする→買い物する→毎日3食作る→洗い物をする
まで全部やるなら、時間も使います。
昼は学食を使う、忙しい日は惣菜を使う、といった選択をした方が学業との両立がしやすい学生もいます。
節約で何円浮くかだけでなく、その節約に何時間必要なのかも考えてください。
大学へ学びに行っているのに、数千円を節約するために学習時間を大きく失うなら、本当に得なのかは分かりません。
奨学金の必要額はこの順番で計算する
まず、1か月に必要なお金を出します。
家賃、食費、光熱費、通信費、日用品、交通費、教材費などです。
次に、
①毎月必要な生活費・教育費
−②親からの仕送りや支援
−③給付奨学金など返還不要の支援
−④無理なく継続できるアルバイト収入
=⑤不足額
と計算します。
ここで重要なのが④です。
「最大で月8万円稼げるから8万円」としてはいけません。
試験期間でも続けられるのか。
課題が増えても続けられるのか。
体調を崩した月でも生活が維持できるのか。
大学生活を壊さず継続できる金額で考えます。
例えば、
月の必要額 16万円 仕送り 5万円 無理のないアルバイト 3万円
なら、
16万円-5万円-3万円=8万円
不足します。
この場合、「第二種で月8万円は多いからダメ」と金額だけを見ても意味がありません。
8万円を借りなかった場合に何を削るのかを見ます。
食費なのか。
教材なのか。
学習時間なのか。
貯金なのか。
そこまで比較してから判断します。
「毎月ちょうど0円」になる設計はおすすめしない
私は、大学生でも少しずつお金を貯めておいた方がよいと考えています。
理由は単純で、生活には予定外のことが起きるからです。
体調を崩して1週間アルバイトに行けなくなることもあります。
PCが壊れるかもしれません。
急に教材を買うこともあります。
就職活動や帰省で交通費が必要になることもあります。
毎月、
収入10万円 支出10万円 残金0円
という設計なら、一度予定外のことが起きただけで生活が崩れます。
ですから奨学金も、
「今月生きられる最低額」だけで考える必要はない
と思っています。
ただし、これは、
「借りられる上限まで借りて貯金しておこう」
という意味ではありません。
生活を安定させるために少し余裕を持たせるのと、必要もない有利子奨学金を大量に借りることは別です。
第一種と第二種では同じように考えない
JASSOの貸与型には主に第一種と第二種があります。
第一種は無利子、第二種は有利子です。(JASSO)
大学の第二種は、月額20,000円から120,000円まで10,000円刻みで選択できます。(JASSO)
第一種は大学の設置者と自宅・自宅外によって選択できる金額が異なり、例えば私立大学・自宅外なら上限は月額64,000円です。給付奨学金との併用では金額が調整される場合があります。(JASSO)
第二種も貸与中は無利子です。利率は貸与終了時に決まり、基本月額については年3.0%が上限です。2026年7月貸与終了者では、固定方式3.000%、見直し方式2.000%でした。今から借りる学生の卒業時の利率がこの数字になるとは限りません。(JASSO)
つまり第二種は、
「今は利息が発生していないからいくら借りてもいい」
でも、
「有利子だから絶対に使ってはいけない」
でもありません。
将来の返済まで見て金額を決めます。
借りる前に、卒業後の返済額の目安を必ず確認する
例えば第二種を月8万円、4年間(48か月)借りると、貸与総額の元金だけで384万円になります。
JASSOが公表している大学の返還例では、月額80,000円×48か月(貸与総額3,840,000円)を借りた場合、利率年2.00%なら返還総額4,699,817円・返還月額19,582円、利率年3.00%なら返還総額5,167,586円・返還月額21,531円で、いずれも20年(240回)での返還例が示されています。実際の利率は貸与終了時に決まるため、この例と完全に一致するとは限りません。(JASSO 返還例)
ここまで見て、
「それなら借りたくない」
と思うなら、それも重要な判断材料です。
逆に、
月8万円を借りなければ週に20時間以上働かなければ生活できず、授業や学習が成り立たない
のであれば、返済負担だけを見て結論を出すのも違います。
現在の時間と将来のお金を両方数字にする。
ここまでやって初めて比較できます。
思ったより必要なければ途中で金額を見直せる
進学前に生活費を完全に予想するのは難しいです。
実際に住んでみたら、
「思ったより家賃以外がかからなかった」
という場合もあれば、
「教材費や交通費が予想以上だった」
という場合もあります。
JASSOでは貸与月額の変更ができます。また不要になれば辞退も可能です。(JASSO)
第二種を繰上返還した場合、繰り上げた期間に対応する利子はかかりません。(JASSO)
だから最初に決めた金額を4年間固定するものだと考えず、
実際の生活費を見ながら調整する
という考え方も重要です。
こんな人は奨学金を無理に借りなくていい
奨学金は使えるから使う制度ではありません。
例えば、
- 家庭から学費・生活費を十分支援してもらえる
- 給付型奨学金と授業料減免でほぼ不足がない
- 無理のないアルバイトだけで不足分を補える
- すでに十分な生活防衛資金がある
なら、貸与型を追加する必要性は低いでしょう。
借りないことで学業や生活に何も支障が出ないなら、将来返す必要のない状態を選ぶ方がシンプルです。
逆に「借りないこと」にこだわりすぎない方がいい人
一方、
- 奨学金なしでは長時間のアルバイトが必須
- 学費や家賃の支払いが毎月ぎりぎり
- 体調を崩したら翌月の生活費がなくなる
- 教材費を削らなければ生活できない
- 一人暮らしで家庭からの支援がほぼない
のであれば、貸与型奨学金を検討する意味は十分あります。
少なくとも私は、
大学で学ぶために進学したのに、奨学金を避けることを優先して学ぶ時間そのものを失う方が常に正しい
とは思いません。
返済が不安なら「借りる前」に返済額を見る
貸与額を決める前に、卒業後の返還額まで確認してください。
JASSOには返還シミュレーションがあります。
また、返還開始は原則として貸与終了月の翌月から数えて7か月目からです。(JASSO)
返還が難しくなった場合には、一定の条件のもとで月額を減らす減額返還制度や、返還を先送りする返還期限猶予制度もあります。(JASSO)
もちろん、
「制度があるから返せなくても大丈夫」
という話ではありません。
救済制度は保険であり、最初から無理な額を借りる理由にはなりません。
結論|奨学金を借りないことではなく、大学生活を成立させることから考える
奨学金には返済が必要です。
だから借りる額は慎重に考えるべきです。
でも、
貸与型奨学金=借金だから0円が最善
とは限りません。
一人暮らしをしながら、
- 家賃を払う
- 食事をする
- 教材を買う
- 大学へ通う
- 学ぶ時間を確保する
- 何かあっても生活を続けられる
ところまで含めて大学生活です。
まず、自分の生活に本当はいくら必要なのかを出してください。
次に、家庭からの支援・給付型奨学金・無理なく続けられるアルバイト収入を引きます。
そのうえで不足するなら、貸与型奨学金を検討する。
そして借りるなら、卒業後の返還額まで確認する。
「借金をしないこと」と「大学生活を守ること」のどちらか一方だけを見るのではなく、両方を数字にして判断する。
それが、奨学金を借りるか迷ったときの一番重要な考え方だと思います。
FAQ
奨学金は借りない方がいいですか?
借りなくても学費・生活費を無理なく賄えるなら、貸与型を無理に借りる必要はありません。ただし、借りないために学業を圧迫するほど働く必要があるなら、奨学金を利用する場合との比較が必要です。
第二種奨学金は在学中も利息がつきますか?
貸与中は無利子です。第二種の利率は貸与終了時に決定し、基本月額については年3.0%が上限です。(JASSO)
奨学金はいくら借りればいいですか?
全国共通の適正額はありません。生活費・学費の自己負担額から、仕送り、給付型奨学金などの支援、無理なく働ける範囲のアルバイト収入を引き、不足額を出して考えます。
一人暮らしなら月何万円必要ですか?
地域によって大きく異なります。全国大学生協連の学生生活実態調査には下宿生の住居費・食費の平均額が、新入生調査には地域別の家賃相場が公表されているので、参考にしてください。(全国大学生協連)
奨学金を少し多めに借りて貯金してもいいですか?
毎月の収支を完全にゼロにせず、突発支出に耐えられる余裕を作るという考え方はあります。ただし、特に第二種では将来利息を含めて返すため、必要性のない金額まで最大限借りることとは分けて考えるべきです。
借りすぎたと思ったらどうすればいいですか?
JASSOの貸与月額は変更でき、不要になれば辞退もできます。第二種は繰上返還すると、繰り上げた期間に対応する利子はかかりません。(JASSO)
著者情報
めめ
統計士(一般財団法人実務教育研究所認定)。スタディツリーで、過去問・参考書・学習法を分析しています。奨学金についても、「借りる・借りない」の二択で終わらせず、返済負担と生活・学習時間への影響を数字で比較できる基準まで落とし込んで整理します。